L’amour Fou
2011年5月17日 映画 コメント (2)映画『イヴ・サンローラン』
仏題L’amour Fou。狂おしい愛、と訳すらしい。
ざっくりした印象としては、
私的なインタビュー映像と言うか
記録映像であり、淡々として静かに
見えて、それでいて激しい、
愛と美の物語。
この映画のタイトルをわたしが付けると
したら(勝手に)
″イヴとピエール~栄光の光と影~″に
すると思う。
20歳そこそこでディオールの後継者と
なったイヴ・サンローランの名声や成功の
影には、時代の変革者として、常に良い
作品を生み出し続けなければならない、
と言うプレッシャーに苦しんだ姿があった。
映画の冒頭シーンはイヴ・サンローランの
引退記者会見の映像だ。
あれほどの名声や成功があれば、
あえて引退表明などしなくても、
名前だけ残しておくことも出来たのに、
実質活動しなくても、今までの蓄積
で死ぬまでデザイナーの地位に居る
ことも、難無く可能だったと思うのに、
なぜ、あえて引退したんだろう。
凄く仕事に対してバカ正直なほどに
真面目な人だったと想像出来る。
会見で自分で言うように、
″アルコールや麻薬に頼った″日々。
そんなイヴを支え続けたのは、
公私ともにパートナーだった
ピエール氏。
イヴとピエールがプライベートで
コレクションしていた美術品の
数々がオークションにかけられる
為に整理や準備がされ、運び出されて
行く映像の間にピエール氏の述懐
と言うか、時系列でイヴとの出会いから
彼が亡くなるまでを語る様子が挟まれる
構成。
イヴの葬儀の様子はほぼ一瞬
映される程度だが、
フランスのトリコロール国旗に
くるまれた棺が印象的。どういう
風に執り行われたかは分からないけど
実質国葬、だったと伝わってくる。
フランスの至宝。モードの帝王と
呼ばれて居たイヴ・サンローラン。
わたしはそこまでファッションに詳しく
無く、リアルタイムでイヴの作品が
時代を席巻した頃を知らない。
おそらく時代のアイコンだったんだと
思う。新しいファッション、特に
女性のファッションの定義を新しく
創り出した。引退会見でも自身で
語っているように多くの女性に
新しい生き方や自信を与えた。
映画の中盤で大きなスタジアムの
中央で歩くスーパーモデル達。
いつ、どのコレクションかは
分からないけど、5大陸300人
のモデル達がポーズを決めた瞬間
が上から映される。映し出される
のは「YSL」の人文字。
スケールがデカ過ぎる。
ウィキペディアを見てたら、
ナオミ・キャンベルなど有色人種
のモデルを積極的に起用した人だった
らしい。5大陸300人の美女が
着こなすイヴ・サンローラン。圧巻だ。
パートナーだったピエール氏以外にも
インタビューや映像で著名人やイヴと
関わりが深かった人々が出てくるけど、
この映画は、ピエール氏のキャラクター
の印象がとても強い。他の人物は
脇役感がある。特筆すべきなのは、
あまりにもさらっと表現しているので
忘れがちになるけども、イヴとピエール
の関係の描かれ方が、良く有る、同性愛
のカップルを描く目線=″どちらのサイドに
寄るにしても妙にバイアスがかかる現象″
が起きて無いことだ。あくまで″愛情によって
結び付いた2人の人間の関係性″を表現して
居て、それ以上でも以下でも無いところが、
素晴らしいと思う。
ラストは2人のコレクションの美術品が
オークション会場でどんどん高値が付けられ、
売りさばかれて行く映像。その様子を無言で
見て居るピエール氏。どんなに高値が付いても、
彼にとってイヴとの日々や思い出は値段なんか
付けられないはずなのに、なぜオークションで
売り払うことにしたのか…。そうしないと思い出
のコレクションに囲まれてツラ過ぎる日々だから
だろうか…。″イヴなら美術品を売らないだろう″
″彼にとって美術品に囲まれることが支えだから
″みたいなことを言っているが…ピエール氏だって
多かれ少なかれそうだったから2人でコレクション
したんじゃないのか…。
2人はもの凄い高値が付くような美術品で
センス良く飾った別荘みたいな家を何個か
持っていて、その映像や写真がたくさん
出てくるけど、それらを見てるだけで
本当に″美的センス″ってこういうことか…
と思う。インテリアとか調度品も本当に凄い。
高級品の合間に置かれる愛犬の写真…
とか、干してあるらしきオシャレなデザイン
の傘…とか、飾られた花…とか、全部が
美しすぎて……イヴとピエール
はこの世にある愛と美に連なるものすべて
を愛したんだなあと言うか、すごい世界を
観持ってたと言うか、すごい人生を生きた
2人だ。
2人の住んでた別荘みたいな豪邸の1つは、
モロッコのマラケシュにあって、関係者の
インタビューの中で(誰が言ってたんだか
分からなくなったけど)″凄く刺激的な
場所″と言う言葉が出てきて、そう言った場所で
良い刺激を受けてこそのイヴ・サンローランの
クリエーションだったんだろうなと思ったし、
モロッコはずっと行ってみたいと思っていたし
さらに行きたいと思うようになった。
全編フランス語。観る前からフランス語
独特の調子やフインキで眠くなるに違いない、
と思っていたが…やっぱり最後の方は眠くなった。
あーー、でもフランス語のフインキはイイ。
第二外国語がフランス語だったけど、まともに
勉強したくなった。
そんなわけで色々刺激を受けた映画でした。
色々感じることはあったけど、最後に思ったのは、
イヴ・サンローランと言う大きな名前の裏方としても、
イヴ個人を支える側としても、時には汚れ役も
せねばならなかったであろうキレ者の相棒ピエール氏
が、今後はイヴ・サンローランと言う場所からある意味
自由になり、彼個人の人生を充実させて生きて欲しいと
言うことです。ピエール・べルジェ氏のご多幸
を心から祈念します。
http://www.ysl-movie.com/index.html
↑映画のサイト
【追記】モデル300人のイベントは、98年ワールド杯
フランス大会の催しとのこと。
仏題L’amour Fou。狂おしい愛、と訳すらしい。
ざっくりした印象としては、
私的なインタビュー映像と言うか
記録映像であり、淡々として静かに
見えて、それでいて激しい、
愛と美の物語。
この映画のタイトルをわたしが付けると
したら(勝手に)
″イヴとピエール~栄光の光と影~″に
すると思う。
20歳そこそこでディオールの後継者と
なったイヴ・サンローランの名声や成功の
影には、時代の変革者として、常に良い
作品を生み出し続けなければならない、
と言うプレッシャーに苦しんだ姿があった。
映画の冒頭シーンはイヴ・サンローランの
引退記者会見の映像だ。
あれほどの名声や成功があれば、
あえて引退表明などしなくても、
名前だけ残しておくことも出来たのに、
実質活動しなくても、今までの蓄積
で死ぬまでデザイナーの地位に居る
ことも、難無く可能だったと思うのに、
なぜ、あえて引退したんだろう。
凄く仕事に対してバカ正直なほどに
真面目な人だったと想像出来る。
会見で自分で言うように、
″アルコールや麻薬に頼った″日々。
そんなイヴを支え続けたのは、
公私ともにパートナーだった
ピエール氏。
イヴとピエールがプライベートで
コレクションしていた美術品の
数々がオークションにかけられる
為に整理や準備がされ、運び出されて
行く映像の間にピエール氏の述懐
と言うか、時系列でイヴとの出会いから
彼が亡くなるまでを語る様子が挟まれる
構成。
イヴの葬儀の様子はほぼ一瞬
映される程度だが、
フランスのトリコロール国旗に
くるまれた棺が印象的。どういう
風に執り行われたかは分からないけど
実質国葬、だったと伝わってくる。
フランスの至宝。モードの帝王と
呼ばれて居たイヴ・サンローラン。
わたしはそこまでファッションに詳しく
無く、リアルタイムでイヴの作品が
時代を席巻した頃を知らない。
おそらく時代のアイコンだったんだと
思う。新しいファッション、特に
女性のファッションの定義を新しく
創り出した。引退会見でも自身で
語っているように多くの女性に
新しい生き方や自信を与えた。
映画の中盤で大きなスタジアムの
中央で歩くスーパーモデル達。
いつ、どのコレクションかは
分からないけど、5大陸300人
のモデル達がポーズを決めた瞬間
が上から映される。映し出される
のは「YSL」の人文字。
スケールがデカ過ぎる。
ウィキペディアを見てたら、
ナオミ・キャンベルなど有色人種
のモデルを積極的に起用した人だった
らしい。5大陸300人の美女が
着こなすイヴ・サンローラン。圧巻だ。
パートナーだったピエール氏以外にも
インタビューや映像で著名人やイヴと
関わりが深かった人々が出てくるけど、
この映画は、ピエール氏のキャラクター
の印象がとても強い。他の人物は
脇役感がある。特筆すべきなのは、
あまりにもさらっと表現しているので
忘れがちになるけども、イヴとピエール
の関係の描かれ方が、良く有る、同性愛
のカップルを描く目線=″どちらのサイドに
寄るにしても妙にバイアスがかかる現象″
が起きて無いことだ。あくまで″愛情によって
結び付いた2人の人間の関係性″を表現して
居て、それ以上でも以下でも無いところが、
素晴らしいと思う。
ラストは2人のコレクションの美術品が
オークション会場でどんどん高値が付けられ、
売りさばかれて行く映像。その様子を無言で
見て居るピエール氏。どんなに高値が付いても、
彼にとってイヴとの日々や思い出は値段なんか
付けられないはずなのに、なぜオークションで
売り払うことにしたのか…。そうしないと思い出
のコレクションに囲まれてツラ過ぎる日々だから
だろうか…。″イヴなら美術品を売らないだろう″
″彼にとって美術品に囲まれることが支えだから
″みたいなことを言っているが…ピエール氏だって
多かれ少なかれそうだったから2人でコレクション
したんじゃないのか…。
2人はもの凄い高値が付くような美術品で
センス良く飾った別荘みたいな家を何個か
持っていて、その映像や写真がたくさん
出てくるけど、それらを見てるだけで
本当に″美的センス″ってこういうことか…
と思う。インテリアとか調度品も本当に凄い。
高級品の合間に置かれる愛犬の写真…
とか、干してあるらしきオシャレなデザイン
の傘…とか、飾られた花…とか、全部が
美しすぎて……イヴとピエール
はこの世にある愛と美に連なるものすべて
を愛したんだなあと言うか、すごい世界を
観持ってたと言うか、すごい人生を生きた
2人だ。
2人の住んでた別荘みたいな豪邸の1つは、
モロッコのマラケシュにあって、関係者の
インタビューの中で(誰が言ってたんだか
分からなくなったけど)″凄く刺激的な
場所″と言う言葉が出てきて、そう言った場所で
良い刺激を受けてこそのイヴ・サンローランの
クリエーションだったんだろうなと思ったし、
モロッコはずっと行ってみたいと思っていたし
さらに行きたいと思うようになった。
全編フランス語。観る前からフランス語
独特の調子やフインキで眠くなるに違いない、
と思っていたが…やっぱり最後の方は眠くなった。
あーー、でもフランス語のフインキはイイ。
第二外国語がフランス語だったけど、まともに
勉強したくなった。
そんなわけで色々刺激を受けた映画でした。
色々感じることはあったけど、最後に思ったのは、
イヴ・サンローランと言う大きな名前の裏方としても、
イヴ個人を支える側としても、時には汚れ役も
せねばならなかったであろうキレ者の相棒ピエール氏
が、今後はイヴ・サンローランと言う場所からある意味
自由になり、彼個人の人生を充実させて生きて欲しいと
言うことです。ピエール・べルジェ氏のご多幸
を心から祈念します。
http://www.ysl-movie.com/index.html
↑映画のサイト
【追記】モデル300人のイベントは、98年ワールド杯
フランス大会の催しとのこと。
コメント
リンクで予告編見たけどその最後で宣伝してた前売り特典のYSLのフレグランスが欲しい!レッドアイやんは前売りじゃなかったからGETできなかったのか。
しかしこの映画アメリカじゃまったく話題になってないよ?
フランスでは話題なんだろうなぁ。日本でも話題なのか?日本人はブランド好きだもんね~。
特典、わたしも気になったけど、
気付いたときは前売り終わってたよー。
アメリカ人好みじゃないかもねー。
日本人が好きそうな取り上げ方かもしれん。
ブランドも好きだし。